オーストリア研修2015 Sattlerhof (サットラーホフ)
サットラーホフ Sattlerhof
南シュタイヤーマークのガムリッツのソーヴィニヨン・ブランのトップ生産者のサットラーホーフは、1966年にヴィルヘルムさんのお父さんが創設したワイナリーです。1haの畑からスタートしました。現在は48haの畑を所有しています。
現当主のヴィルヘルムさんはSTKの創設メンバーです。STKはブルゴーニュのような畑の格付けを、独自の厳しい基準で行なっています。1級畑、特級畑は、畑の場所や向き、標高、土壌、熟成のポテンシャルなどが考慮されるとのこと。公的機関ではありませんが現在10の生産者が加盟しています。
ヴィルヘルムさんは、「哲学がある造り手と組んでしっかりとした基準を確立させたいので、最初はメンバーが少なくてもよい」とおっしゃっていました。
(ドイツもそうですが、畑の格付けは難しいのですね。)
栽培は、ビオディナミですが、ワインに特化したビオディナミの「レスペクト」という栽培方法を取り入れようか思案中とのことでした。
※STK
シュタイヤーマルクの優良生産者で構成されるグループ。
Steirische Terroir- und Klassikweingüter
シュタイリッシェ・テロワール・ウント・クラシックヴァインギューター
◎STKの畑
ザルナウベルグ(Sernauberg) STKエアステラーゲ
醸造所の近くの畑で標高385メートル。樹齢28年で小石の混ざった砂質土壌です。主にモリヨン(ブルゴーニュ系の品種)を造っています。
ファルフェンガルテン (Pfarrweingarten ) STKグローセスラーゲ
標高365メートルの小さな畑です。盆地でやや暖かいため、果実味がしっかりします。土壌は貝殻石灰。ブルゴーニュ系の品種に向いています。ここは教会所有の土地だったところ。
クラナッハウベルグ(Kranachberg) STKグローセスラーゲ
標高450メートル畑はいくつかあり、石灰、マンガン、小石、砂まじりの土壌、グリマシーファーと呼ばれる粘板岩があります。塩っぽいミネラルとスパイスを感じるワインとなります。SBを60%造っています。
カペレンヴアインガルテン(Kapellenweingarten)
新しい畑です。標高550メートル。土壌は、砂、小石。3年前に、37haの森を含めた土地を購入しました。
◎畑
雨は多く800から1200ミリ。畑には雑草をはやしています。ファンフェンガルテンは、やわらかな石灰土壌です。
ネットは主に雹対策。鳥の害からも守れます。いろいろやってみたけれど手間はかかるがこれが一番効果的だったそうです。
ジュートシュタイヤーマークではシャルドネのことをモリヨンブランと読んでいます。シャルドネのほうが売りやすいかもしれないですが、この名前を残したいと思っている、とのこと。
鳥だけでなく鹿の害もあり、地域の農作物に被害が出るから毎年一人で5匹捕まえなければならないことになっているそうです。
◎醸造
畑でぶどうを選ぶので選果をセラーではやらないとのこと。
ヴェルシュリースリング以外のマセラシオンをプレス中に行ないます。時間はピノ・ブランとモリヨンは5から7時間、SBムスカテーラーは12時間です。
タンクを閉じて還元状態で浸漬します。そのとき二酸化硫黄は使用しません。セラーは重力システムでぶどうに負担をかけないようにしています。
全ての区画は別々に仕込み、ワインにしてみてきにいらなかったら使わないというやり方です。モリヨンとヴァイサーブルグンダー、SBプリバットは木樽発酵をします。あとはステンレスです。
【試飲】
Von Sand 2014
地元用の夏ワイン。若木のSB使用。最初に収穫するワイン。
※地元の人のために低価格で造っていて、輸出はしたくないそうなので、現地に行ったらぜひ飲んでみてください。
コメント)ショウガ、ハーブ、桃、グーズベリー、酸はしっかり。果実味とよいバランス。蟻がラベルにいっぱいいるのは好き嫌いがでるかも。
Gamlitzer Weissburgunder 2014
ガムリッツァー・ヴアイサーブルグンダー
ヴィンテージを素直に表現するクラスのワイン。2014年は軽やか。
コメント)桃、洋梨、リンゴなどアロマティック。酸しっかり。和食に合いそうな控えめさと、きめの細かな口当たり。11.5%と低アルコールだが、薄さは感じない。好きなタイプ。
2014年は収穫量が少なかったため、畑名ワインができなかった。村名ワインに畑名のぶどうをいれているので品質は高い
Gamlitzer Morillon 2014
ガムリッツァー モリヨン
コメント)辛口 果実味はちょっと閉じ気味、塩気のあるミネラル。スパイス。
Gamlitzer SauvignonBlanc2014
ガムリッツァーソーヴィニヨン・ブラン
3月から販売しているが、本当は9月頃からのほうがよいと思っています。低温浸漬をしてあるので複雑です。熟成もできるワインです。
コメント)グレープフルーツなどの柑橘系の果実、わずかに桃、グラッシーでミネラリーなSB。クラシックなSB。アルコールは12%。
Sernauberg Sauvignon Blanc 2014 STK エアステラーゲ
ザルナウベルグ・ソーヴィニヨン・ブラン
コメント)アロマティック、可憐な感じ。
Kranachberg Sauvignon Blanc 2013 STK グローセスラーゲ
クラナッハウベルグ・ソーヴィニヨン・ブラン
コメント)厚みのある味わい。しっかりとした果実味と、塩っぽいミネラル。甘めの香りがある。
アルコールは13%。まだ若い、閉じ気味と思った。
Kranachberg Sauvignon Blanc 2012 STK グローセスラーゲ
クラナッハウベルグ・ソーヴィニヨン・ブラン
コメント)きのこっぽさ、厚みのある味わい、塩っぽいミネラル。アルコールは14%。
Pfarrweingarten Morillon STK 2013
ファルフェンガルテン・モリヨン
天然酵母主体で発酵させています。2000年から2003年は100%天然酵母でしたが、残糖が多いSBは造りたくないので、培養酵母を使うときもあります。18ヶ月澱ともに熟成。新樽は30%使用。
Pfarrweingarten Morillon 2012 STK
ファルフェンガルテン・モリヨン
2012年は涼しい年でした。アルコールは13.5%
コメント)果実味と樽のバランスがよく凝縮感があってエレガント、
塩っぽいミネラルが後半の味をひきしめている
Fassreserve 7 ファスリザーヴ7 2007
7年小樽で熟成させたヴァイサーブルグンダー。2014年に瓶詰め
30%は225リットルの新樽。
2007年は偉大な年で、クオリティー、ボリューム、すべてにおいて申し分がなかった。4haの畑からすべて畑名ワインをつくることができた。天然酵母を使って発酵。いくつかの樽が完全に発酵しなかったため、7年熟成させることになった。
コメント)7年樽で熟成させていたのに樽に負けることのないしっかりとした果実味。バランスがよく、繊細。まだ若々しい。
Sauvignon Blanc Privat 2011
ソーヴィニヨン・ブラン・プリヴァット
クラナッハウベルグ(Kranachberg) のベストSBでつくったキュヴェPrivat 2011。
ファルスタッフデ95ポイント。2年間澱とともに熟成。来年の5月に販売開始。
【サットラーホーフまとめ】
誠実で情熱的。やさしくて厳しそうなヴィルヘルムさんは、ブルゴーニュ的な畑の格付けをしていきたいという信念があるためか、地質や畑の向きなどをよくみせてくれました。すでに息子に醸造を任せているところがすごいですね。素敵な家族でした。
ワインは、上品な香りと味わい。遅摘みして辛口に仕上げているフラッグシップのソーヴィニヨン・ブランは硬質だがダグノーのように太めのミネラルではなく、あくまでエレガント。STKの畑は、それぞれの個性があっておもしろいですが、まだ私には微妙な差とも感じました。上級者向けワインかも。2、3本ゆっくりちゃんと飲んでみたいです。このワインの価格と品質のよさをきちんと伝えられるようになりたいなあという、向上心をくすぐるワイナリーでした。
鍋敷き