[南アフリカワインQ&A] ドノヴァン・ラール&ピーター・アラン・フィンレイソン
アフリカワインQ&A
ドノヴァン・ラール&ピーター・アラン・フィンレイソン来日セミナーのときにお客様から出た質問とその答えをまとめました。かなり活発に意見が交わされたよい会でした。
ドノヴァン・ラール
◎自己紹介
スワートランドにある自分のワイナリーの他に2つのプロジェクトがあります。昔は、流行ればどこにでもソーヴィニヨン・ブランを植えたりしたけど、今の若い世代は、適した場所に適した品種を植えて、土地の個性を表現することを大事にしています。だからスワートランドではスワートランドに適した地中海性のブドウ、赤だったらシラー、グルナッシュ、ムールヴェードル、白はシュナン・ブラン、ルーサンヌ、マルサンヌ、グルナッシュ・ブランを使って、ステレンボッシュではボルドー品種を使っワインを造っています。
ステレンボッシュのクラウズ・ワインでは、ピノ・ノワールを醸造していますが、ステレンボッシュは暑すぎるからいいピノはないので、クリスタレムと同じヘルマナスからブドウを購入しています。
◎Q&A
1)とてもユニークなブレンドの白ワインですが、どうやってブレンドの割合を決めるのですか?
スワートランドは、夏は40℃になる暑い場所からクリエイテイブに考えないといけないです。すべての品種を合わせると区画は20以上持っていて、それを別々に仕込んでブレンドしています。ラール・ホワイトの4つの品種は、メインの花崗岩土壌のシュナン・ブランがミネラリティーを、ヴェルデーリョが酸味を、シャルドネがテクスチャーを、ヴィオニエがフローラルなアロマをワインに与えます。何度も試飲しながらブレンドしてどの品種の個性でもなくバランスのとれた味わいにしたいと思っています。同じ畑でも場所によって収穫のタイミングを3回に分けたりするからちょっとクレージーかもしれないけど。ワインのバランスを大事にしたいんです。
2)収量はどのくらいですか?
ブッシュヴァインの古木は収量が少ないことが特徴で平均3t/ha
3)畑の大きさはどのくらいですか
それぞれとても小さくて、平均0.5から1haです。
4)南アフリカのソーセージブルボスにはどのワインが合いますか?
ブルボスはスパイシーなのでラール・レッドがいいと思います。
5)ラールのワインはブショネが少ないよね
高いコルクを使っているから。このコルクはボトルの価格と同じ。
6)ヒュールバーグのぶどうのブレンドの割合は、どうやって決めたのですか?
ステレンボッシュはボルドーの品種に適した気候ですが、実際自分の畑のぶどうをみたら、プティヴェルドのできがとてもよかったから、この品種をメインにして造ろうと思いました。普通の人は、マルゴーとかラトゥールのブレンドの真似をするけど、ぼくはコピーワインを造りたくないから、ステレンボッシュのヒュールバーグが持っている畑においてベストな品種を選んで、試飲を繰り返ししてバランスをとりました。ヒュールバーグは、ラール・ワインと比べると新樽も使っているモダンな味わいのワインです。
7)なぜこんなに暑いスワートランドで、フレッシュな酸味のある白ワインができるのですか?
花崗岩土壌の古木のシュナンはミネラリーでフレッシュな味になるからです、特にphが低いので、熟成もできます。シュナンは南アフリカで古い品種だから、この土地を表現するのに最適だと思っています。
8)スポーツはやっていましたか?
大学までラグビーをやってました。ポジションはロック。(やっぱり)
ピーター・アラン・フィンレイソン
◎自己紹介
クリスタルムのブランドで、南アフリカの南端西ケープ州のウォーカー・ベイでシャルドネとピノノワールからブルゴーニュスタイルのワインを造っています。ウォーカー・ベイは、南アフリカでピノとシャルドネが成功することができる唯一の場所だと思います。夏でも気温が30度を超えることはなく、涼しい海風の影響で、ぶどうはゆっくり生育します。今までの南アフリカは、パワーやオークの風味の強いワインが主流でしたが、ドノヴァンや私の世代はワインのエレガンスとバランスを追求しています。二酸化硫黄は、瓶詰め前に僅かに使って自然な果実の味わいを大事にしたいと思っています。なるべくワインメーカーの干渉を少なくして、この土地を表現するワインを造りたいのです。クリスタルムとは別にパラディズムというプロジェクトがあり、そこではシラーやグルナッシュなどの地中海品種からエレガントなワインを造っています。ぶどうはグルナッシュだけはウォーカー・ベイのものですが、シラーとムールヴェードルはスワートランドのぶどうです。
◎Q&A
1)南アフリカに石灰土壌はありますか?
南アは古い地質を持っているけど、海の底だったことはないので、いくつかの場所は知っていますが基本的に石灰は多くないです。
2)ニューワールドの多くの造り手はピノとシャルドネに粘土石灰土壌がいいと思っているように見えるけど、あなたはどう思いますか?
もちろん粘土石灰もピノとシャルドネに向いていると思います。南アフリカ独特の土壌の頁岩も水はけがよくて、保水性のある粘土との組み合わせによってピノとシャルドネが成功しているので向いていると思います。
3)灌漑について
ほとんど灌漑はしないです。ただ木が死んでしまうような緊急事態のときには行ないます。ぶどうの実がつくときに、数を増やすために灌漑をしたり、収穫の前に灌漑して実を太らせたりということはしないです。
4)ヴィンテージの差はありますか?
フランスと比べたら安定しています。でも2014は涼しかった。僕が経験したなかで一番。2015は乾燥して暑かったです。
5)ピータ・マックスにブレンドする畑の標高を教えてください。
100〜120メートルと300メートル、700メートルです。標高の低いとこは2月初旬から収穫をはじめて、高いところは3月になります。
6)ピノのクローンは何を使っていますか?
115と667と777です。115はストラクチャー、777はフルーティーさを備えています。667は両方の性質を持っています。
7)どのくらいのブリックスで収穫しますか?
畑によりますが、22.5から24.5くらい。他のワイナリーは、25から26のところが多いです。個人的には、遅く積みすぎることはよくないと思っています。濃いワインは簡単にできます。バランスが大切だと思います。
8)全房発酵はどんな利点がありますか?
ステムからのタンニン、スパイシーさ。発酵途中の二酸化炭素による酸化防止作用が期待できます。マバレルは、涼しい畑でステムに若干青さが残るので100%除こうします。年によって畑によって異なりますね。
9)何故ステレンボッシュ大学の醸造学科に入学したのに、経済と哲学に変えたのですか?
ステレンボッシュ大学の醸造学科は化学がすごく厳しい学科で、ぼくはもっと実用的なことをやりたくてあまり授業にでなかったんです。化学あまり得意じゃなかったし。詩を書いたり、文章を書いたりする方が得意でした。あと、女の子を追いかけたり、飲みに行ったりすることが忙しくてね(笑)
10)経済学者は誰の本をよく読みましたか?
自由経済が好きだったので、アダムスミスとか。あとフランンス現代思想のミッシェル・フーコー、ジャック・デリダとか
11)クリスタルムのピノはどんな料理に合いますか?
マグロをミディアムかミディアムレアに焼いたものとか、南アフリカだったらスプリングボックにキノコのソースが定番です。この間日本で食べた松茸のすきやきとピーター・マックスは完璧だったよ!(う、うらやましいです。そんなの日本に住んでいてもめったに食べることはできないです。)
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ピーター・アランとラールは、(ちょっと冗談は言いますが)質問する側が全くどきどきせずに、質問できる環境にしてくれて、テクニカルなことからプライベートなことまで、どんな質問が出てもまじめに答えてくれました。“実際ワイン飲みながら説明したほうがわかるよー”と打ち合わせになかったのに、自分でワインのサービスも始めちゃうというホスピタリティーの高さにはこちらが感動しました。裏表ないはっきりした意見に、誠実さとワイン造りに対する情熱を強く感じる一日でした。
写真は、Mitsu-Getsuのメーカーズディナーです。
しまった、、Mitsu-GetsuもAnywayも集合写真を撮る暇がなかった。。。
次回は忘れずに撮らないと。。