Rall Wines & Crystallum Wine Tating Seminar 2015.10.01
10月1日に、南アフリカからまさに大型新人のピーター・アラン・フィンレイソン氏とドノヴァン・ラール氏、通訳はヴィノテークの有坂芙美子さんという豪華メンバーのティスティングセミナーに参加してきました。
今日はその様子を基本的にノンフィクションで、(訳してますが)語った言葉で、お届けします。
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◎なぜ今南アフリカか(ラフィネ坂口社長より)
今の世界のワインシーンで最もホットな場所だと思っています。現地に行って感動したんです。作っている人もほんとにいいやつで、僕は、ヨーロッパの人しか今までつきあいがなかったのですが、彼らとはちょっと違うんですよ。非常にいい印象をうけたんです。そうはいってもその感動はぼくの言葉では伝えきれないし、実際飲んでもらって、彼らに会ってもらったほうがいいと思ったんです。そこで今回このような機会を持ちました。よろしくお願いします。
◎南アフリカ概要(ラフィネ文屋さんより)
南アフリカは、ニューワールドでは最も古いワイン産地と言われている場所で、ぶどうにとって理想的な気候と地質学的に古い地層を追っています。またスワートランドの降水量は少ないですが、無灌漑の畑のブッシュヴァインの古木も多く見られる場所です。
ワイン産地はほとんどユネスコの世界遺産に登録されているケープ植物保護地域の中にあるので、生物の多様性を守り、自然と共生するワイン造りをするために農薬の使用や水の使用、リサイクルなど自然環境を守るための厳しいルールがあります。
大量生産のバルクワインのイメージ強かった南アフリカですが、現在海外で修業した若手の小規模生産者が増えています。南アフリカで畑を所有するためには畑の1.3倍の自然な土地を同時に持って自然環境を守る必要があるため、自社畑をもつには資金が必要です。そのため小規模若手生産者の多くは、信頼できる農家からぶどうを購入しています。
◎クリスタレム ピーター・アラン
クリスタレムのピーター・アランです。
父はヘルマナスではじめてワイナリーを造ったハミルトン・ラッセルの初代ワインメーカーで、僕はワイン造りの家系の3代目です(有坂さんのよるとお父さんは、は若いときはガイゼンハイムで、アンブロワジー氏のアシスタントを務めていたとのこと、そのときにフィンレイソンさんに会ってるらしいです、さすがワイン業界の重鎮です)
2007年にクリスタレムを兄のアンドリューとともに設立しました。ピノとシャルドネを作っています。2008年がファーストヴィンテージで、今は8つの畑と契約してワインを造っています。畑のあるヘルマナスはウォーカーベイにある涼しい産地で、海流と南極からくる涼しい海風の影響で冷涼気候を好むぶどうに適した場所です。土壌は地質年代の古い粘土と頁岩(シェール)を多く含んでおり、ニューワールドでピノとシャルドネに適した最高の場所の一つに入ると思います。
私のワイン造りの哲学は、土地、畑を表現するワイン。醸造においては二酸化硫黄を瓶詰めのときと、マロラクティック発酵の後に使うだけで培養酵母や酵素、酸などは添加しないです。栽培は基本的にオーガニックですが、ごく少量の薬品を使うことはあります。土壌は世界で最も古い地質と言われている場所で、頁岩と粘土が豊富にあります。頁岩は水はけがよく粘土は水分を低温に保つため、ぶどうはナチュラルなバランスの糖と酸を持つことができます。
2014年クレイ・シェール・シャルドネ
15%の新樽で熟成させています。2月中旬に収穫しました。いつもより非常に涼しい年だったのでミネラルと酸が際立つエレガントなワインになりました。
2013年クレイ・シェール・シャルドネ
あたたかかったので、果実味の豊かでリッチな味わいです。
このシャルドネは、エレガントでフレッシュなバランスのよいワインを目指しています。土壌は、表土に2~50センチのシェール(頁岩)があって水はけがよいです。その下に水をキープすることのできる粘土があります。シェール(頁岩)はテクスチャーを与えるのでバトナージュしなくても酸味がきれいに表現されます。雨は比較的多く800mlから1200mlです。醸造は、全房でプレスして樽に入れて2,3日後自然に発酵がはじまります。
質問>区画による違いはありますか?
標高、土壌によって違います。あと斜面。クレイ・シェールは南東斜面に植えられた涼しい畑です。山の上部は砂地なので、ぼくはピノとシャルドネには使いません。
2014年マバレル ピノ・ノワール
名前は南アフリカの有名な詩からとりました。(川に降りたらワニがいて、ワニの里と呼んでいたから、、っていう話でしたが、しっかり聞き取れず、再度聞いておきます)25年前に父がシャルドネをもっていたところで、そこの1ヘクタールにピノを植えてもらいました。標高700メートルで海から60キロメートルの涼しい場所です。収穫はいつも一番遅くなります。2014年は3月に収穫しました。香水のような芳香があるエレガントなワインです。樹齢はまだ6年。これからが楽しみな畑です。
2014年ボナ・ファイド・ピノ・ノワール
標高が100メートルマバレルより低い畑です。樹齢は約9年。ワインの名前は、30年来の知人である農家の方の畑なのでラテン語の「よい信頼」という意味でボナファイドと名づけました。彼は知らない人にぶどうを売りたくなかったので、ちょうどよかったです。
ここも粘土と頁岩の土壌ですが、より頁岩の岩の層が厚い場所でワインはスパイシーでスモーキーな要素を持ち、構成もしっかりとしています。この畑はやや暖かいので収穫は速めで2月の最初です。
2014年キュヴェ・シネマ
クリスタレムで最も古いシングルヴィンヤードです。(樹齢9年)2002年か2003年にナポレオンの映画の撮影にセントヘレナ島として使われた場所です。1ヘクタールに750本の密植をしています。ここは粘土が豊富な頁岩土壌で、固く、ミネラルの要素が表現されます。2014年は特に涼しいとしだったのでより顕著に感じられます。
質問「よいぶどうはどうやって手に入れるのか、畑の所有は考えないのですか」
>よいぶどうを得るためにはいろいろな方法があります。よい畑を見つけたら、長い契約(たとえば20年)を農家さんと結んで、他よりちょっと高い価格でぶどうを購入するとか、彼らの自家消費用のワインをつくるという約束をするとかです。人によって違いますね。また、個人的に彼らと、よいぶどうを作ってもらっています。
南アフリカでは、小さな区画の畑だけを買うことはできません。畑を所有するためには大きな土地を買う必要があります。大手のスポンサーや資金のない若手はだいたい契約栽培のぶどうを使っています。ぼくの場合は、今年から妻のワイナリーのワインも造ることとなりました。そこは自社畑を持っています。これからは醸造だけでなく栽培もやることになってそれが私の新しいチャレンジです。
ただ、クリスタレムのワインはこのまま畑を借りて造るというスタイルを続けたいと思っています。この地で小さなワイナリーを興すモデルとして。
◎ラール・ワインズ ドノ・ヴァン・ラール
私は彼とは違って地中海性気候のスワートランドでワインを造っています。暑いのでピノはできません(笑)シラー、マルサンヌ、ルーサンヌ、グルナッシュ、ムールヴェードルに適した気候です。スワートランドは雨は少ないですが、ブッシュヴァインの古木のため無灌漑です。暑い場所ですがフレッシュでエレガントなワイン造りをめざしています。
ラール・ホワイト
50%のぶどうは、花崗岩土壌の42年の古木のシュナン・ブランです。地質年代が古い花崗岩土壌で水はけがよく、ワインにミネラルを与えます。ぶどうはちょっと早めに収穫して、全房発酵させています。シュナン・ブランは、南アフリカで歴史のある品種なので土地の個性を伝えられると思っています。ヴェルデーリョは、南アでは4つの生産者しか作っていません。1月半ばに収穫します。酸が高いのでワインにテクスチャーとフレッシュさをあたえています。
醸造ですが、ぶどうは別々に仕込んでからブレンドします。全房で天然酵母で発酵させています。ヴェルデーリョの発酵は6から9ヶ月かかりますが、ゆっくり時間をかけて発酵させることで、複雑姓がでます。新樽は使いません。4から15年使ったブルゴーニュの樽で熟成させています。瓶詰め前にろ過するだけで、清澄はしていません。
2014年は、例年より涼しかったのでミネラリーでフレッシュな印象です。
2013年は、暑かったので凝縮感があります。今ヴィオニエのフローラルなフレーバーとナッツやヌガーの香りがでてきてちょうど飲み頃になっていると思います。phが低いので酸化しにくく、長い熟成が期待できます。
ラールレッド
毎年シラー85%、グルナッシュ15%のブレンドです。シラーはシスト(片岩)土壌です。シストのシラーは、ブルーベリーのような紫色の果実と香水のような芳香をもつワインになります。スワートランドは砂質の花崗岩が多いですが3ヶ所にシスト土壌があります。有名なのはマリヌーのあるリーベックカステル地区です。スワートランドのシスト土壌は、だいたい表土にシストの岩の層があり、下の方にいくと粘土です。
醸造は50%は全房でプレスして樽に移し、天然酵母で発酵させています。一日一回ピジャージュをします。よく熟した茎からくるタンニンのフレーヴァーが好きです。
あと、私はスワートランド・インディペンデンスという生産者のグループのメンバーなのでその紹介をしますね。スワートランドの23ワイナリーが所属しています。スワートランドの個性をもったワイン造りを提唱するために、スワートランドのぶどうを使うこと、スワートランドに適した品種を使うこと(シラー、グルナッシュ、ムールヴェードル、シュナン、セミヨンなど)、酸の添加禁止、栽培はオーガニックであることなどの厳しい原則があります。
質問「単一品種のワインはつくらないのですか?]
孤立した場所にある古木のサンソーとグルナッシュ・ブランの畑から単一品種のワインができる予定です。サンソーはフレッシュでいきいきとしたブルゴーニュスタイルのワインになると期待しています。800本作ったうち400本は日本に輸入します。非常にエレガントなのでアメリカの料理とかには合わないと思うからです。グルナッシュ・ブランは、ピクニッククルーフの標高700メートルの畑です。長めのスキンコンタクトをしていますがオレンジワインではありません。グルナッシュブランの皮はとても薄いので、やりすぎるとにごった汚い要素がでてきてしまいます。このグルナッシュ・ブランは単一でもきれいにバランスがとれています。
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セミナー総括
フランスワインに慣れていると契約畑のものとドメーヌではドメーヌのほうがいいというイメージがありますが、契約も20年という結婚か?と思わせる長期なので、ほとんど自社畑とかわらない情熱が注がれているのではと思いました。また、自家消費用のワインを造ることが契約にはいっているなど、お互いの信頼関係も感じました。
どのくらいの割合か調べないといけないですが、南アで自社畑を持っているところの多くが16世紀から続く大農場か、他の仕事で資本を得た個人、アメリカやその他の国の資本が入っている企業といった印象を以前訪問したときに受けたなあと思い出しました。
クリスタレムは、ピノは3つ並べてみるとシングルヴィンヤードごとの個性が明確。物理的な標高の高さ、土壌構成が無理なく表現されたお手本のようなワインでした。今年から妻のワイナリーの(ウォーカーベイのやや北)栽培のほうも手がけるとのこと。非常に楽しみです。
ラールはあの暑い産地で冷涼感のあるワインをつくりあげていて、ブレンドの天才だなあと思っていたのですが、今度単一品種もやるんですね。しかも半分日本にわけてくれるって。日本って愛されてるなあとうれしくもあり、彼のワインの価値をきちんと伝えていかなければ!という責任も感じました。