ARTHUR LELIEVRE
アルチュール・ルリエーブル
❦ 詳細・歴史
マイィの西隣に位置する Ludes リュード。これまでこの村に本拠に置くグローワーで広く 知られているのはベレッシュくらいしかいませんでした。しかし、ベレッシュ兄弟のデビューから 20 年近くが経ち、リュードにもやっと新世代のグローワーが登場しました。2023 年末にデ ビューした Arthur Lelièvre アルチュール・ルリエーヴルです。1993 年生まれ、ミレニアル 世代のアルチュールは、アヴィーズの醸造学校を卒業後、ベレッシュで 4 年間研鑽。その後、 家業に参画しました。当時アルチュールの両親は Forget-Chauvet フォルジェ・シューヴェ のブランドでシャンパーニュを造っていました。しかし、そのスタイルは、ステンレスでの醸造と 短い熟成で、ブレンドを重視する旧態依然としたものでした。エティエンヌ・カルサックやラファ エル・ベレッシュといったグローワーから教えを受けたアルチュールは、すぐに除草剤や殺虫剤、 防腐剤などの使用を止め、持続可能なビオのブドウ栽培に転換しました。土壌のバランス を保つためのホリスティックなアプローチも採用し、その後、ビオディナミの手法も取り入れて 栽培を行っています。畑が徐々に生命を取り戻し、豊かに育つのに合わせて、アルチュール は自らのワイン造りのアイデンティティを模索する旅へと出発しました。
進取の気性と情熱に溢れたアルチュールは、ワインの世界で独自の道を模索し、創造 性と新たな地平を切り開きたいという強い想いを抱いていました。彼は様々なブドウ品種、 醸造、熟成を実験しながら、時間を見てはブルゴーニュやジュラのドメーヌを訪問し、ヴィニ ュロン達と交流を深めました。そして、7 年間の内省を経た 2021 年、家業のブランドは別 に、自分名義のブランド『アルチュール・ルリエーヴル』のシャンパーニュの醸造に着手したの です。こうして、2023 年末に 3 種類のキュヴェをリリースしてメジャーデビューを果たしたので す。ドメーヌでは、手摘みで収穫したブドウを樽発酵・樽熟成させます。228 リットルと 350 リットルの容量の異なるオーク樽で野生酵母で自発的に発酵を行います。毎年 20%の新 樽を慎重に導入し、冷涼な地下セラーで、ゆっくりと穏やかなプロセスで発酵を行っていま す。ブドウは品種毎、リューディ毎、別々に醸造されます。その後、窓や扉を開けて自然な 低温状態にして、ノンマロに誘因しますが、マロが起こった場合は自然に任せています。リキ ュール・ド・ティラージュは、原酒のヴァン・クレールとビオのテンサイ糖を使用しています。デゴ ルジュマンは月の満ち欠けに合わせて行っています。
❦ 畑
現在ドメーヌの栽培面積は 10 ヘクタール。大部分がリュードにありますが、一部 Taissy タイシーや、ヴァレ・ド・ラルドルの Lagery ラジュリーの村にも小さな区画を持っています。北 向きの冷涼なミクロクリマの恩恵を受けるリュードでは、歴史的にムニエの栽培比率が高く (リュードの村全体の 1/2 でムニエが栽培されています)、ドメーヌも栽培品種の 46%が ムニエで、ピノ・ノワールが 36%、シャルドネが 18%の比率です。そして、区画の殆どが北向 きです。温暖化が進む中、リュードはもっと注目が集まってもおかしくない村ですが、ここも隣 のマイィやヴェルズネイと状況が似ていてメゾンの力が強く、カナール・デュ・シェーヌと隣村の シニー・レ・ローズに本拠を置くキャティエとアルマン・ド・ブリニャックの影響力が非常に強く、 新世代のグローワーはこれまで出てきませんでした。アルチュールも収穫ブドウ全体の内、 厳然した 35%のみをドメーヌ用に残し、残りはネゴスに売却しています。しかし、アルチュー ルがリュードに登場したことで、俄然、このエリアにも大きな注目が集まっています。
❦ 醸造
人為的介入を可能な限り少なくし、テロワールを尊重したブルゴーニュのスタイルにインス パイアされたアルチュールは、複雑性と芳醇なアロマを強調した、リュードのテロワールに敬 意を表す新しい感覚表現を追求しています。アルチュールは樽の使用を熟知しており、フレ ッシュさとミネラル感、香りの純粋さを保ちながら、エレガントで洗練された、五感を刺激して くれるシャンパーニュを手掛けています。また、ドメーヌでは、マッサル・セレクションのピノ・ファ ンの植樹や、畑の生物多様性を高めるためのアグロフォレストリーの導入、醸造のさらなる 洗練性の追求など、継続的な進化と努力を続けています。まだデビュー2 年目で、生産量 も 2022 ヴィンテージで僅か 6 千本弱ですが、既にオランダ、デンマーク、イタリア、英国、ド イツ、アメリカ、カナダなどに輸出され、高く評価されています。弊社も 2024 年の秋にドメー ヌを訪問。日本へのアロケーションを頂くことができました。