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Wills Wine

ウィルズ・ワイン

ウィルズ・ワインの写真1 ウィルズ・ワインの写真2 ウィルズ・ワインの写真3
URL https://www.willswine.fr/
設立 2019年
本拠地 Condrieu(コンドリュー)
当主 Will Arnold(ウィル・アーノルド)
畑の総面積
資料提供 Vin Amis


❦ 詳細・歴史

ウィル・アーノルドはイギリス、ケント出身。ワイン造りの家系に生まれたわけではない。しかしワインは幼少期から 常に身近にあった。父ジョン・アーノルドは1998年にA&B Vintnersを創業し、イギリスで最も信頼されるワインマーチ ャントの一つへと育て上げた人物である。家庭の食卓には土地の個性を明確に映し出すワインが並び、産地や生産者に ついての会話が日常にあった。ウィルは「造る側」ではなく、「選び抜かれたワインに囲まれて育った世代」である。 やがて彼はこう考えるようになる。「ワインをより深く知るには、ワインが生まれる現場を知る必要がある。」2014 年、ドメーヌ・ピエール=イヴ・コラン=モレでの収穫参加が転機となる。流通から畑へ。そこから約10年に及ぶ修業 が始まった。ジャン=ルイ・シャーヴ、ジュリアン・ピロン、デニス・ヴォルフ、ブリック・ハウス、セレシン・エス テート。ブルゴーニュ、ローヌ、ファルツ、オレゴン、ニュージーランド。南北両半球を横断しながら、彼は技術だけ でなく「判断」を学んだ。2019年、ジュリアン・ピロンのセラーマスターを務めていたタイミングで、ウィルは初めて 自らの名を冠するワインとしてシラーColombier-le-vieuxを数樽仕込んだ。これがWills Wineの実質的な出発点である。 構想は以前から抱いていたが、日々の醸造現場で培った判断と技術が、自分自身の表現として結実した瞬間だった。 2022年まではジュリアン・ピロンのカーヴを借りながら、自身のプロジェクトを並行して進めていく。彼がローヌを拠 点に選んだ理由は、驚くほど素直なものだった。「初めて訪れたとき、畑の景色がとても美しいと感じた。」花崗岩の 斜面、風に開かれた丘陵、光が抜ける空気感。北ローヌ特有の緊張感と透明感を併せ持つ風景が、彼の感覚に強く響い たという。ローヌに血縁はない。だからこそ、この土地を“選んだ”。Wills Wineは継承ではなく、選択から始まったプ ロジェクトである。


❦ 畑

自社畑を持たず、ネゴシアンスタイルを採用。重要なのは、誰から果実を託されるかである。ウィルは「自分の価値観 に沿う栽培者からのみ果実を購入する」と明言する。オーガニック認証、あるいはそれに準じた栽培を行う生産者に限 定し、畑の管理を見届け、自ら手で収穫する。「買いブドウであっても畑を理解し表現することが最も重要であること は変わらない。毎年同一の畑からブドウを購入している」と、畑の声を学びながら表現を磨く姿勢は一貫している。 2024年にはこれまで購入してきた畑の一部を長期賃借し、栽培工程への関与をさらに深める段階へと入った。ネゴシア ン中心から、栽培への主体的関与へ。プロジェクトは次の局面へ進みつつある。ブドウを購入する畑は南北ローヌとそ の周縁に分散する。セギュレの粘土石灰とガレ混在土壌から生まれるavant midi、サン=ジャン=ド=ミュゾルの分解 花崗岩土壌によるhameau de luc、ミルリーやタリュイエの花崗岩土壌からのfond cajou。地域横断的なアプローチも特 徴的で、blue plateauでは南ボジョレーのガメイとアルデッシュのシラーをブレンドする。さらにクルトゾンの南向き砂 質土壌からは、樹齢65年のグルナッシュ主体のヴァン・ド・フランス、sand castlesが生まれる。この区画は、シャト ー・ラヤスのシャトーヌフ・デュ・パプの畑に隣接する区画であり、同様に砂が支配的なテロワールを共有している。 「砂質土壌のグルナッシュはいつだって特別なものだ」と語る。セラーがアペラシオン区域外にあるためヴァン・ド・ フランスへと格下げしてのリリースだが、地理的制約はむしろ表現の自由へと転化している。少量のグルナッシュ・ブ ランを加えることで、構造に奥行きとニュアンスを与えることが可能になったのである。テロワールは分散している。 しかしウィルの価値観は一貫している。


❦ 醸造

「最も大切にしているのは、シンプルな醸造によってワインのエネルギーを保つこと。」醸造の核は低介入にある。白 は全房プレス、赤は50-100 %全房発酵。野生酵母を行い、無清澄・無濾過で瓶詰めする。亜硫酸は必要最小限のみ。 2022年まではジュリアン・ピロンのセラーを借りて仕込んでいたが、2023年以降はディディエ・ジェランの旧カーヴへ 移転し自らのセラーで醸造。コンクリートタンク、ファイバータンク、樽を併用する体制を整えた。「目指しているス タイルを、より表現できる環境になった。」二層構造の地下セラーと複数のコンクリートタンク、プレス機を備えたこ とで、全房プレスや全房発酵など、自身の意図をより明確に実行できる環境を得た。赤の抽出は”全房×穏やか”が中心 線にある。avant midiは100 %全房、コンクリート発酵、12カ月ドゥミ・ミュイ熟成、無濾過。クランチーさと明るさを 保つことを狙ったスタイルである。fond cajouでは全房インフュージョン、カルボニック、除梗を組み合わせ、600 L/ 400 L樽とステンレスを併用。白は全房プレスを基本とし、350 L樽での発酵・熟成、澱との接触を重視する。木樽内で マロラクティック発酵を終え、熟成中は澱引きを行わず、瓶詰2カ月前にのみ澱引きを行う。亜硫酸はゼロではなく最 小限。さらにビオディナミの考え方に基づき、月齢を意識した澱引きや瓶詰も実践。「私にとってワインで大切な要素 は、フレッシュで軽快さがありながら輪郭があり、同時に力強さではなくエネルギーに満ちていること。そしてミネラ ルがしっかりと感じられること。」ローヌの典型的な重さを避け、シルキーで飲みやすいスタイルを志向。幼いころか ら素晴らしいワインに囲まれて育ったウィル。生まれ育った環境に世界各地での経験が重なり、ワイン生産者としての 思想を形づくってきた。Wills Wineは、ローヌという成熟の土地で「エネルギー」をどう保つかという問いへの応答で ある。継承ではなく、選択。誇張ではなく、均衡。その姿勢が、彼のワインの輪郭を形づくっている。