Franz Keller
フランツ・ケラー
❦ 詳細・歴史
ドイツ最南端に位置するバーデン地方はドイツで最も暖かいエリアで、ライン川の対岸にはストラスブールやミュールーズといったアルザスの街並みを臨むことができる。
ブドウ畑は南北に約400km細長く伸びており、ドイツにおけるピノ・ノワールの聖地として知られている。
その中でも注目すべきは中央やや南寄りのエリア、原始時代の火山活動によって標高が550m程まで隆起しているカイザーシュトゥール地区である。フランツケラーは同地区のフォークツブルク・オーバーベルゲン村に位置する家族経営のワイナリー。
1893年にワイン貿易商として創業して以来、長きにわたり高品質なワインを輸入し世の中に紹介してきた。現4代目当主のフリッツ・ケラーはワイン生産者である一方、高品質なボルドーとブルゴーニュに特化したワイン商でもある。目利きをし、本物を見極めた上で仕入れるからこそ、ケラーの造るワインにもその一流の品格が表れ、エレガントな味わいが形成されている。
現在はフリッツの息子フレードリッヒが醸造責任者となっています。
フランツケラーのワインは単体でも勿論良いが料理と合わせることでより一層その魅力が花開く。フリッツ自身がミシュラン一つ星のレストラン・シュヴァルツ・アドラーの経営者でもあることから、ワインは一部の人たちの限られた嗜好品ではなく、あくまでも料理のそばにあって全ての人が楽しむものというメッセージが飲み手にはっきりと伝わってくる。ピュアで明快な味わいはどれも素晴らしい品質であるが、策を凝らしたような仰々しさは一切なく、凝縮感がありながらも同時に快活でエレガントな余韻が楽しめる。ドイツのピノ・ノワールというと、デカンター誌の「ブルゴーニュ以外のピノ・ノワール産地特集」でアール地方のジャン・ストッデンが世界一の座を取ってからその注目度がより一層高まっているが、それに比例するように、ここ近年の品質向上のスピードは目を見張るものがある。その中でも、例えばジャン・ストッデンやメイヤー・ネーケルは味わいの主張の強い単体勝負のワインであるのに対して、ケラーは力の抜けたスタイルだが味わいは一流という点で他にはないユニークな個性がある。
その裏付けとして、アイヒェルマン誌で最高の5つ星評価に加え、2017年度版ではシュペートブルグンダー・シュロスベルクが赤ワイン唯一の100点満点を獲得、ドイツ・ベスト・ピノ・ノワールの称号に輝いた。WA誌ではバーデンで最も素晴らしいPNを造ると絶賛され、デカンター詩でもドイツのピノ・ノワールのTOP20でその名が挙がっている。
❦ 畑
ワイナリーでは現在約35haの自社畑を所有し、これに加えて買いブドウ畑が30ha。
エントリークラスのグーツワインと一部の一級畑エアステ・ラーゲは自社ブドウと買いブドウのブレンドで、特級畑グローセス・ゲヴェックスは自社ブドウのみで造られている。
土壌は色の濃い火山性土壌がメインでこれがワインに独特なミネラルとスモーキーさを与えている。その他はロス、ロームに加えて一部チョークも見られる。
畑では除草剤、殺虫剤、化学肥料は使用しない。
❦ 醸造
醸造では、白はフレッシュな果実を保つために除梗せずにプレスし、ステンレスタンクとオークの大樽を使い分けて熟成させる。赤では1/3程度を全房発酵し、マセラシオンの最中はピジャージュではなくルモンタージュを行うことで、エレガントな果実味を引き出す。その後バリックでの熟成では、全てブルゴーニュの一流樽メーカー(フランソワ・フレールやタランソーなど)のみを使用する。
焼き目はミディアムまでに抑え、果実とバランスよく調和させて決して樽が強く出すぎることないよう意識する。