イタリアワインの歴史は古く、紀元前に古代ギリシャ人によってブドウ造りが伝えられた事から始まります。イタリア半島はワインの醸造技術を持ち込んだ古代ギリシャ人によって“Enotria Tellus”(ワインの土地)と呼ばれる程、ワイン造りに適した土地、気候を持っていました。その後、ローマ帝国の領地拡大とともに、イタリア半島から現在のドイツ、フランス、スペインとい>った国々にブドウ造りが伝わり、現在におけるワイン栽培のオールドワールドが形成されます。この時代においてワインをそのまま飲むのは医療用として飲用される時だけで、水やお湯で割るなどといった方法でワインを楽しんでいました。
近代になるとイタリアワインは西ヨーロッパの繁栄とともに地理的に有利なフランスワインに人気を奪われてしまい、その後も質より量に重きを置いたワイン造りを続けたイタリアは低品質なワインを造り続けるなど、低迷の時代を迎えました。1963年に原産地呼称が制定されたのと同時期に品質重視の造りを行う生産者が増えていき、新技術の導入やセラーの改修などイタリアワイ>ンは飛躍的な品質の向上が見られるようになったのでした。
そんな中、世界的なマーケットで一躍有名になったイタリアワインがサッシカイアを筆頭としたスーパートスカーナです。スーパートスカーナは、原産地呼称では使用が認められていないブドウ(多くはカベルネ・ソーヴィニヨンなどの外来品種)を多く使って造られたワインの中で、イタリアの原産地呼称の最上級であるD.O.C.G(現D.O.P.)を超える味わいを持つワインを指します 。この流れはイタリア全土に広がり、D.O.CやD.O.C.Gの規定から外れたヴィーノ・ダ・ターボラ(スーパーV.d.T.)を生み出し、イタリアワインの複雑さに拍車をかけました。
イタリアワインと一口に言っても北はスイスとの国境であるトレンティアーノ=アルト・アディジェ州から南はシチリア州に渡る全20州でワイン作りが行われており、使用されている品種は土着品種だけで2000種類以上。(政府公認品種は400以上)それに加え、先に述べたスーパーV.d.T.などありとあらゆるワインが存在し、優秀なワインジャーナリストやワインのプロフェッショ>ナル達でも全てのワインを把握しきれない状況です。だからこそその複雑さ、奥深さに魅了されるイタリアワイン愛好家も多く存在しているのだと言えるでしょう。
近年ではシチリアのエトナにて新規ワイナリー数が急激に増え、注目を集めるなどイタリアにもまた新しい波が次々と押し寄せています。新しい波に代表されるのが、土着品種回帰の動き。各地で絶滅しかけたブドウ品種の復興が各地で行われており、イタリアならではといったワイン造りに注力しています。また昔ながらのアンフォラを使った醸造、世界的ブームであるオレンジワ>インと呼ばれる醸し系白ワインの醸造を試みる生産者たちも増えてきており、イタリアワインは今一層複雑かつ奥深くなっていくでしょう。