Brack Mountain
ブラック・マウンテン
❦ 詳細・歴史
近年、カベルネ・ソーヴィニヨンのクオリティの高さに注目が集まるアレキサンダー・ヴァレーは、ソノマ・カウンティの最北部に位置するアペラシオンである。同じソノマの中でも、ロシアン・リヴァー・ヴァレーよりも北、つまり内陸に位置するA.V.A.では気候は温暖になるが、特にアレキサンダー・ヴァレーでは日中はソノマで最も暑くなるとされ、それとは対照的に、夜にはペタルマ・ギャップから侵入した太平洋からの霧がロシアン・リヴァーをさかのぼってくるため非常に涼しくなる。この昼夜の寒暖差が非常に大きい気候により、リッチで肉厚な果実とストラクチャー、そしてエレガンスを備えたカベルネ・ソーヴィニヨンが生まれる一方で、価格的にはナパ・ヴァレーほど高騰しないのも見逃せないポイントである。
このアレキサンダー・ヴァレーを含めたソノマ・カウンティ中心に、北カリフォルニア全域から優れたエリアと畑、栽培家を選りすぐり、ワインを手掛けているのがブラック・マウンテンである。2008年に設立されたこのワイナリーのモットーは、「どんな価格帯でも最高のクオリティを実現すること」に尽きる。設立者でありオーナーのジェイソン・エノスは大学で醸造を学び、レストラン業界で食材やワインの買い付けに10年近く携わった。このキャリアの中で食材とワインの組合わせの重要性を学んだ彼は、同時にナパやソノマ、セントラル・コーストなど、カリフォルニアの著名アペラシオンや、その地の栽培家・生産者とも親交を深めた。その後、「カリフォルニアの偉大なA.V.A.のひとつから傑出したワインを造る」という昔からの夢を実現すべく、ソノマ・カウンティのドライ・クリークにエノス・ヴィンヤードを設立。それに続き、「誰もが手に入れられる偉大なワイン」を生み出す次世代ワイナリーとして、彼の親しい友人であり同じヴィジョンを抱くヌ・ドゥー・ヴィンヤードのクリス・フィッツジェラルドとともにブラック・マウンテンを立ち上げた。
彼らが畑選びで重要視しているのは、全ての品種でより冷涼なアペラシオンや畑を選ぶこと。カリフォルニアでは、ワインのアルコール度数は概して高くなりがちだが、味わいや料理との相性を考慮し、各地区の平均よりもアルコール度数の低いワインを目指しているからである。理想の畑を探すことができるのも、ジェイソンがこれまで培った経験とコネクションあってのことである。ブドウ栽培にはサステイナブル・アグリカルチャーを採用。畑では切った枝を畑に還して肥料にし、畑を緑で覆うことで豊かな動植物相や水分の保持に役立てている。
醸造家責任者を務めるのはクリスの息子、ダニエル・フィッツジェラルドである。彼はワイン造りの経験をより多く積むために3年間も北半球と南半球の生産地を往復したエネルギッシュな若手醸造家だ。オーストラリアのコールドストリーム・ヒルズでは収穫チームを指揮し、カリフォルニアのピノ・ノワールの銘醸ウィリアム・セリエムではワイナリーの求めに応じて収穫に参加、醸造家のボブ・キャブラルとともに働いた。13年に渡るヨーロッパ在住歴も有する彼のワイン造りには、ヨーロッパと新世界のセンスが共存する。セラーではブドウに手を加えることは最小限に止め、バリックでの熟成もオーク主体の味わいにならないよう配慮し、厳選したアペラシオンと畑のキャラクターを表現している。
ブラック・マウンテンのワインは、肉厚で華やかな完熟果実を備えたアレキサンダー・ヴァレーのカベルネ・ソーヴィニヨンや、リッチでエレガントなロシアン・リヴァー・ヴァレーのピノ・ノワールやシャルドネなど、品種とアペラシオンの正統性と優位性を十分に味わうことができるバランスに優れたワインばかりだ。自分たちのワインを飲む時はいつでも、上質なワインを口にする喜びを感じて欲しいという思いを胸に、価格以上のクオリティを誇るワインを世に送り出す新星ワイナリーである。
❦ 畑
栽培方法 サステイナブル・アグリカルチャーを採用。畑では切った枝を畑に還して肥料にし、畑を緑で覆うことで豊かな動植物相や水分の保持に役立てている。
❦ 醸造
醸造方法 白:手作業で選果後、房ごとプレスし、デブルバージュ。自然酵母で発酵の後、フレンチオークのバリックで熟成。ワインにボディを与えるために週1回バトナージュを行う。
赤:開放型のステンレスタンクで自然酵母のみで発酵。ピジャージュを定期的に行い、マロラクティック発酵も行う。熟成にはフレンチオークのバリックを用いる。