オーストラリアワインセミナーまとめ #2015.11.8

11月8日に開催したオーストラリアワインセミナーをまとめます。
今回は、ジェロボームさんとKpオーチャードさん合同で、主にkpの谷上文祥さんにお話をして頂きました。

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オーストラリアは、10年くらい前まで

「おいしいけど、濃くてパワフルで甘い果実味爆弾が多い」

「樽も強い」

「ごくまれにエレガントなワインもある」

「必ず輸出に赤道を通るので、ワインの品質のために二酸化硫黄多め」

という印象で実はあまり得意ではなかったのですが、ここ数年非常に、バラエティにとんだワインが出てきて、なんかイメージ変わったなと感じていました。
先日行なわれたオーストラリアワイングランドティスティングや食品産業新聞の記事でも、オーストラリアワインの多様性が言及されていました。
Anyway は、南アフリカのワインがイチオシなのですが、今回の試飲会でオーストラリアの多様性を実感して、おもしろくなってきたなーと認めざるを得ないと感じました。昔ながらのマーガレットリバーのシャルドネやクレアのシラーズやリースリングの安定したバランスのよいワインはコスパもよく相変わらず使いやすいと思いましたし、タスマニアとかキャンベラ・ディストリクトの、ピノやシラーのぴんとした冷涼感は、(恥ずかしながら、そのエリアを飲むのがはじめてだったので)強烈に印象に残りました。

さて、谷上さんのセミナーをだいたいそのまま記載します。オーストラリアワイン専門で、あの広い大地を車で運転して回っているだけあって、オーストラリアの地図と距離感がよく伝わりました。

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今日はオーストラリアのイメージをちょっと変えたいなと思っているので、いつもはカジュアルな服来てるんですけど、スーツ着てみました(笑)

 

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◎スクリューキャップ

さしあたって、オーストラリアワインといえば、まずスクリューキャップです。
コルク栓のワインには、12本中1本はブショネとよばれる不快な香りのワインがあるという調査があります。これはコルクの漂白の過程で起きてしまうそうです。
オーストラリアの生産者は、これはアンフェアだと思っています。
もし、ブショネを知らない人がブショネのワインを飲んだ場合、高級ワインであってもおいしくないことになります。おいしいよってすすめられて飲んでみたら言われた事と全然違っておいしくなかった。そこでワインって高いだけでおいしくないってなってしまうのは、アンフェアだと。

グロセットという有名なリースリングの生産者が

「人類が月に行くというのになぜまだコルクやねん、もっといい栓も開発できるやろ」

と言ったというのは有名です。

 

 

◎オーストラリアの料理について

行ってみたら意外と料理がおいしかった、と言われる国のナンバーワンが、オーストラリアです。かなりイメージとかけ離れている国、という調査があります。

 

 

◎オーストラリアは広い

オーストラリアとヨーロッパ
オーストラリアは全土にヨーロッパがすっぽり入るほど広い国です。ちなみに、シドニーとアデレードは、ロンドンとミラノくらい離れています。これだけ離れていたら同じ国でも違って当然ですよね。

土壌も南オーストラリアのテラロッサという赤い土が有名ですが、クォーツやシェールなどもあります。世界で最も古い大陸のひとつと言われていますので地質年代はワイン産地の中では最古になると思います。

これだけ広ければ様々なテロワールがありワインがあります。大きく違って当然です。産地は、メルボルンだったらヤラヴァレー、パースだったらマーガレットリヴァーというように、都市の近くにあります。オーストラリアワインとひとくくりにするのではなく、それぞれの産地をちょっと知ってもらえたらと思います。

 

◎オーストラリアワインの歴史

ジェームスバスビー

ジェームス・バスビー

オーストラリアワインは、1788年にアーサー・フィップがシドニーにブドウを植えたのが始まりと言われていますが、そのブドウはすぐに枯れてしまいました。
オーストラリアワインの父と呼ばれて尊敬されているのは、ジェームス・バスビー。彼の方です。フランスとスペインから苗木をはこんできました。

フィロキセラは、1800年代にヴィクトリア州で猛威を振るいましたが他の州にはそれほど伝わらなかったので、南オーストラリアのクレアヴァレーやバロッサヴァレーにはノンフィロキセラのリースリング、シラー、グルナッシュの100年を超える古木が多く存在しています。南オーストラリアのプレミアムレンジのシラーズはこの古木から生み出されています。

old vines

 

◎飲酒運転
オーストラリアは、血中アルコールが100mlあたり0.05gまでだったら飲酒運転していいといういい加減な国なので、ワインやビールのボトルにスタンダードドリンクという表示がされています。一人ずつアルコールの分解率は違いますので、どうなんだろうとは思いますが、まーそーいうとこは適当な国です(笑)

 

 

 

ーーーー産地紹介ーーーーーー

australia map

 

◎南オーストラリア

中心地はアデレードで約1時間でバロッサバレーに到着します。バロッサ、マクラレーン・ヴェール、クレア・ヴァレーの標高が低い地域は、力強いワインができます。シラーズが有名ですね。また、100年を超える樹齢の高い木が多いです。ペンフォールズのグランジはこの地域の古木を厳選して作るワインです。南オーストラリアでもイーデンヴァレーは標高500〜1000メートルと高いので、高品質なリースリングの産地で、クレア・ヴァレーの標高の高いエリアも酸のシャープなリースリングが有名です。

南オーストラリアは、オーストラリアワインの約半分を作っています。つまり安い大量生産のワインの産地。収穫は、ぶどうの畝にトラクターを走らせての機械摘み、選果も機械で行って人件費を抑え、収量もなるべく高くしています。だから1本500円とか700円の価格でできるのですが、一度見ると車とかの工場に近い感じでちょっとびっくりすると思います。

 

 

 

◎ヴィクトリア州
ヴィクトリア州の中心地はメルボルン。食の都と言われるだけあって、洗練されたワインが多いです。他の州よりも涼しいので、同じシラーズでもバロッサヴァレーがブラックペッパーの風味だとすると、ヴィクトリアはホワイトペッパーの風味がします。海沿いのモーニントン・ペニンシュラは、イタリアのリゾートのような雰囲気の港町で豪邸が多い(=お金持ちが多い)場所です。

 

 

 

◎タスマニア
北海道の約三分の二の大きさに55万人の人口が住んでいます。
人がほとんど住んでいないです。バス海峡が本土との間にありますが、海流がとても冷たいため、南半球ではめずらしく北が涼しい島です。中央から下は世界遺産の温帯雨林の森が広がっています。世界地図で見るとわかりますが、タスマニア島の西は大陸がないのため、汚染の原因となるものがなく、世界で一番きれいな雨が降る島と言われています。雨水は瓶詰めされてタスマニアンレインウォーターとして販売もされています。
ワインの生産量はオーストラリア全体の0.6%。涼しい気候を利用して高品質なシャルドネ、ピノ・ノワール、スパークリングワインの生産が盛んです。

 

◎キャンベラ・ディストリクト
シドニーとメルボルンの間で、シドニーまで車で3時間。今注目の産地です。周辺の標高が高く、オーストラリアのアルプスと呼ばれており、冬場はスキーができるところもあります。冷涼な気候を利用してシャルドネやピノ、エレガントはシラーなども作っています。(意識の高い人が多いので、このへんはビオワインも多く成功しています。裕福な人も多い地域です)

 

 

◎西オーストラリア

州都のパースから約3から4時間でマーガレットリヴァーに到着します。インド洋からの暖かい風の影響を受けるため、わりと暖かく、ボルドーとよく似た気候と言われており、昔からボルドースタイルのワインが有名です。シャルドネの栽培もさかんで、高い評価を得ています。内陸部は暑いので

ここはよい波が来るのでサーファーの聖地としても有名です。シャルドネとボルドースタイルの赤ワイン、内陸部ではシラーも作っています。

 

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◎オーストラリア全体のこと

オーストラリアワインは、アメリカの輸出で伸びてきた国なので、アメリカ人に好まれるワインを長年作っていました。有名な動物ラベルのワインは、アメリカで売り上げナンバーワンになっています。ここ5年で、生産者たちが自分の作りたいワインを作るようになりました。世界的な味わいの流行もあります。

85%で品種表記ができるので、ピノ・ノワールと記載されていても10%シラーがブレンドされていることもあります。

オーストラリアは乾燥しているので灌漑設備はどこも備えています。古木はしなくても生育できますが、設備はあるのが普通です。

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ご参考までに試飲コメントです。

Jeroboam (ジェロボーム)

◎Sparkling

Dunes & Green (South Austraria) N.V Chardonnay Pinot Noir ¥2100(税抜)
デューン&グリーン(南オーストラリア)シャルドネ・ピノ・ノワール

コスパとバランスのよいスパークリング。ピノだけでなく、カベルネ、シラーズ、グルナッシュなどの黒ブドウ品種がブレンドされているため、リッチな印象。香り、味わいにくせがなく、酸っぱすぎたり、ミネラル強すぎたり、青かったりというネガティヴなポイントがなく、素直に飲みやすいスパークリングでした。。価格が手頃で、この日一番よく売れました。白を基調としたボトルデザインも好評。
赤い毛糸でボンボンとか作ってプレゼントしたら冬っぽくていいかなって思いました。

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◎White

(Yarra Valley) 2012 Over the Sholder Pinot Grigio ¥3000(税抜)
オークリッジ(ヤラヴァレー)オーヴァー・ザ・ショルダー・ピノ・グリージョ

アルザスではなく、どちらかというとイタリアのピノ・グリージョ系のアロマ。ボリュームがあってリッチな印象。 ヤラヴァレーの涼しさの影響で酸もあって食事向き。和食というよりも、ステーキハウスやシーフードレストランに合いそうな味わい。
このくらいの価格の辛口でアロマティックでボリュームのしっかりしているワインは、以前勤務していた外国人のお客さんが多いレストランでとても人気がありました。

6690_oakridge PG 2012

 

 

Vasse Felix (Margaret River) 2013 Fillius Chardonnay ¥3500(税抜)
ヴァス・フェリックス(マーガレット・リヴァー)フィリウス・シャルドネ

果実味、樽の風味など全体的にバランスのよく、この価格で上手に作ったなと思うシャルドネ。きれいな酸味がしっかりと余韻に残るので、ブルゴーニュ派もニューワールド派にも好まれそうな安心できる味なので、紅白セットでギフトにするときとか重宝しそうです。

6691_Vasse Felix Charonnay 2013

 

 

 

Jim Barry (Clare Valley) 2014 The Lodge Hill Riesling ¥3200(税抜)
ジム・バリー(クレア・ヴァレー)ザ・ロッジ・ヒル・リースリング

クレアらしい、きりっとしたレモンやライムのような酸味。食事があって引き立つ辛口のしっかりとしたリースリング。春巻きや焼きビーフン(パッタイ)チャイニーズ・チキンサラダなどエスニック系の料理や魚介のカルパッチョなどが合いそう。

 

5898_Jimbary Riesling

 

 

◎Red

Kilikanoon (Clare Valley) 2010 Killerman’s Run Shiraz ¥3200(税抜)
キリカヌーン(クレア・ヴァレー)キラーマンズ・ラン・シラーズ

シラーズらしいシラーズ。濃いめの甘苦い風味とスパイス。2010年ヴィンテージのため、タンニン、果実味、アルコールがなじんで落ち着いています。このぐらいのほうが個人的には好きですが、そろそろインポーター在庫も収量で2014年に切り替わるとこのこと。この価格でこの果実と酸味のバランスの良さはさすがですね。肉ワインって感じなので、子羊背肉、豚ロース、リブアイステーキなどが食べたくなりました。

5901_kilikanoon Shiraz

 

 

Kooyong (Mornington Peninsula) 2013 Massale Pinot Noir ¥4000(税抜)
クーヨン(モーニントン・ペニンシュラ)マサール・ピノ・ノワール

クーヨンの最もカジュアルレンジのピノ。おおらかな果実味と華やかさが印象的です。赤い果実の香り主体で、タンニンはソフト。アルコールのボリュームも中程度のバランスで、のみやすく、多くの人にすすめやすいピノ。余韻にかつおぶしの旨味のような味が残るので、和食にとても合いそうです。

 

kooyong Massale PN

 

 

kpオーチャード

◎Sparkling

BK Wines (South Austraria) 2015 Pettilant Nature ¥3600(税抜)
BKワインズ(サウスオーストラリア)ペティヤン・ナチュレ
青リンゴのような甘酸っぱい味の微発泡。よく冷やさないと吹き出すそうです。二酸化硫黄無添加の優しい味わいなので、フレッシュな果実とと酵母のうまみがすーっと体になじむかんじの飲み心地のやわらかさ。低アルコールなので、お酒の苦手な方にも。

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White

Hoddles Creek (Yarra Valley) 2014 Yarra Valley Pinot Gris ¥2800(税抜)
ホドルス・クリーク(ヤラ・ヴァレー)ヤラヴァレー・ピノ・グリ

ややピンク色の色調のピノグリ。アルザスのピノグリのような濃い香りではなくイタリアのピノグリージョ系ですが、果実味がやわらかく、優しいのみごこちです。食事のじゃまをしないタイプで、こうやって並べて飲むと一見地味に感じますが余韻も長く、この価格はお買い得。3500円くらいの味です。

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Hoddles Creek (Yarra Valley) 2014 Wickhams Road Gippsland Chardonnay ¥2300(税抜)
ホドルス・クリーク(ヤラ・ヴァレー)ウィッカムズ・ロード・ギップスランド・シャルドネ

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ホドルスクリークらしいやわらかな果実味でやさしい飲みごこちのシャルドネ。
この価格はすばらしいです。一見地味ですが、飲みあきしないので、飲み放題のワインだったらついつい飲み過ぎてしまうと思います。(レストランでこのワインを飲み放題にしてたらすごく良心的なお店だと思います!!)

 

smallfry (South Austraria) 2015 Barossa Riesling ¥3200(税抜)
スモールフライ(サウスオーストラリア)バロッサリースリング

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はちみつ、レモン、白い花などきれいなアロマ。残糖28gでアルコール度数も低めのリースリング。
酸味があるのでべたっとせず、アルコールが低くても味が薄いとは思いません。バロッサヴァレーというより、スモールフライらしいエレガントでやさしい飲み心地です。

Red

COLLECTOR (New South Wales) 2011 Marked Tree Red Shiraz ¥3600(税抜)
コレクター(ニューサウスウェールズ)マークト・トゥリー・ レッド・シラーズ

 

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涼しいキャンベラディストリクトの個性が際立つワイン。クロナキラとは場所は近いそうですが、全くタイプが違います。カベルネフランのような爽やかなハーブと黒い果実味と白こしょう、カルダモンなどのふわっとしたスパイス香。中華料理に合いそう。チンジャオロースーとか酢豚など脂で炒めたピーマンと豚肉が食べたくなりました。

Stoney Rise Wines (Tasmania) 2010  Pinot Noir ¥4700(税抜)
ストーニー・ライズ・ワインズ(タスマニア)ホーリーマン・ピノ・ノワール

 

holyman pino

 

冷涼な気候を感じるピンと張りつめたようなピノ。黒い果実香り主体で、後半の味わいが超繊細。くもりのないクリーンな果実味と酸味がすーっと続くエレガントな余韻。安いワインではないのに、スパークリングの次に人気があったワインです。生産量がないのでもうほとんど売るものがない。。。というのが残念です。他の産地にない味でキャラがたっていていいなと思いました。

 

 

 

 

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