南アフリカワインの継続的なワイン革命〜アントニオ・ガッローニのヴィナスより

アントニオ・ガッローニ(Antonio Galloni)のヴィナスに2015年の6月に日掲載されたステファン・タンザー(Stephen Tanzer)氏による南アフリカワインの記事をざっと紹介します。

原文はこちらです
http://www.vinousmedia.com/articles/south-africa-s-ongoing-wine-revolution-jun-2015

※ヴィナスはアントニオ・ガッローニ氏がワイン・アドヴォケートを引退したあとに、立ち上げたメディアです。
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南アフリカは最も古いニューワールドワインであり、最も新しいオールドワールドワインあるといえます。

 

ケープではオランダの東インド会社によって1659年にはじめてワインが造られました。

(ちなみにオーストラリアのボタニーベイにジェームスクックが上陸したのは1770年)

 

主要な多くのワイナリーは1700年代前半までワイン造りをしていましたが、19世紀後半のフィロキセラの被害よってケープのぶどう畑はサンソーのような収量の多いぶどうに植え替えられ、ワインの供給過剰時代に入りました。その後の暗黒のアパルトヘイト時代に、ワイン産業は、アメリカやその他の主要な国から輸出制裁を受けることになります。

この間、南アのワイン農場は世界的に競争できるワインを生産する機会がありませんでした。実際ほとんどのぶどう栽培家は単に協同組合にぶどうを売り、彼らはそのほとんど蒸留アルコール、シェリーまたはポートに変えました。ワインメーカーはほとんど世界を旅行する事はなく、世界のワインの新しい発展とは断絶されていました。さらにケープの生産者のほとんどは、きちんとしたワインに必要な高品質の農機具やコルクボトルなどを得るのも困難でした。

さらに、南アのぶどうの木はウィルスに侵されていました。外国からウィルスにおかされていない株を入手できなかったので、ぶどうは15から20年おきに新規に植え替えをしなければなりませんでした。そのためステレンボッシュやコンスタンシアのようなワイン産業が栄えた主要な産地に古木はほとんどありませんでした。南アは、ワイン造りにおいて非常に恵まれている環境にもかかわらず世界のワイン地図から実質的に消えていました。

 

アパルトヘイト廃止のあと、1991年にアメリカが制裁をといたことで、南アフリカからの最も安いワインが突然市場に溢れ出します。

しかし、それは昔の話で今は状況が違っています。

私は、ケープの主要ワイン産地を2002年、2004年、2006年に訪れました、2006年以降私はケープのワインを定期的に試飲し、新しく販売されたワインのレポートをしています。

今年の4月のある週に私はワイン産地が急激な変化を遂げたことを学びました。もしあなたがまだ南アのワインを最近飲んでいなかったら、私この非常に豊かでバラエティにとんだワイン文化を持つ国についてもう一度考えるようにアドバイスします。価格はとても手頃です。

 

今世紀の変わり目から広範囲にわたってウィルスフリーの木に植え替えられたことが、ワインの品質に大きく影響を与えました。以前にケープのワインに顕著にあったクレオソートや焼けたゴム、ハーブの青さやお茶のような香りはなく、よく熟した果物の風味が存在しています。

 

新しい若い世代のワインメーカーは、世界を旅して、国際市場で競争するにはどうするべきかを学んできました。彼らは歴史や伝統にとらわれません。歴史的に最も主要な産地はステレンボッシュとコンスタンチアでしたが、近年最もエキサイティングなワインの多くは他の新しい地域から造られています。ほとんどの新しい産地は、標高が高く、海の涼しい風の影響をうけるような以前の主要産地より冷涼な地域です。現在では、ステレンボッシュの歴史的ぶどう畑のオーナーも、エルギン、ウォーカーベイ、エリムなどのより涼しい地域に注目し、昔より低いアルコール度数のよりフレッシュでエネルギーにあふれるワインを造ろうとしています。

 

◎スワートランドレボリューション

スワートランドは、新次元のワインをケープにもたらしました。ケープタウンの北の暑く乾燥した広大な地域は、伝統的に小麦や他の穀物が広範囲に植えられていました。ワインに関する限りでは、スワートランドはブレンドに使われる粗野な高アルコールワインの生産地として長く知られていました。この地方は協同組合に支配されており、特大サイズの赤ワイン、中甘口の白とブランデー用の白ワインを造っていました。しかしスパイスルートのチャールズ・バックとイーベン・サディ、最近では、アディ・バーデンホースト、アンドレア&クリスマリヌー、マーク・ケント、カーリー・ロウ、ドノ・ヴァンラール、ディッド・サディーが急速にこのエリアが高品質のワインを造る可能性を見いだしました。特にすばらしいワインを造り出すの斜面の古木のぶどうが広範囲に広がっていたことは幸運でした。また土地が安かっことも幸いでした。

 

独立してワイン造りをした優秀な若いワインメーカーが成功するための一つの道ができました。他に上記の全員、スワートランド・インディペンデント(S.I.P)のメンバーは、自然に成案されたルールに基づいてワインを造っています。例えば新樽は25%以下に抑えるなど。私はS.I.Pはワインのデンマークにおける映画運動のドグマ95に相当するとみなしています。それよりも独断的ではなく、もっと十何にワインメーカーの個性を受け入れてはいますが。

 

スワートランドでは4つの国際的な品種(カベルネ、メルロー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン)が広く植えられていましたが、現在この地域の新しいスタイルのワインにおいては実質的に禁止されています。ブレンドにおいても10%のまでしか使用することができません。一方許されたぶどう品種は、土地と気候によく合った地中海とローヌ地方の品種です。赤はカリニャン、サンソー、グルナッシュ、ムールヴェードル、ピノタージュ、シラー、ティンタバロッカ、白はシュナンブラン、マルサンヌ、ルーサンヌ、ヴィオニエがすべてのブレンドの90%を構成しないといけません。

私が4月に南アで試飲した最もエキサイティングなワインのいくつかはスワートランドで造られたか、スワートランドのぶどうを他で醸造したものでした。それらは、一般的に予想される暑く、乾燥した地域のワインの味とは非常にかけ離れています。灌漑をしないドライファーミング、高い樹齢の収量の低いぶどう、新鮮さを保つためのやや早めの収穫により、適度なアルコールレベルで著しく複雑な風味を持つ、アロマティックなワインを造ることができます。例えば、この夏のスワートランドの平均気温は、パールより5℃かったのですが、私が試飲したスワートランドのワインは、非常にアロマティック、複雑性に富み、味わいの輪郭がクリアで、優雅さをもっていました。私は、偶然4月に試飲したスワートランドのトッププロデューサーの60アイテムのワインのテクニカル情報を見る機会がありました。彼らのうちの一人だけが14%という高めのアルコールであることにショックをうけました。私が広範囲に試飲した他の地方のワインのなかでエルギンはスワートランドと同じ適度なアルコール濃度を示しました。

 

◎スーパースターはいないが円熟したチーム

 

南アフリカは、アルゼンチンのマルベックやニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン、オレゴンのピノ・ノワールのような代表的な品種がないことで国際的なマーケットにおいて不利な状況でした。ケープを代表する品種をあげるとするなら多分最も多く栽培されている品種のシュナン・ブラン(スティーンともよばれる)ですが、歴史的にそのほとんどはブランデー生産用でした。ケープの独自の赤の品種は1920年代にステレンボッシュ大学で開発されたピノ・ノワールとサンソーの交配品種のピノタージュです。(それ以前サンソーは、ケープ広く栽培されていました)どちらも国際的な支持を得る事ができませんでした。しかし、現在造られているシュナン・ブランの力強さとエネルギー感、食事に合いやすい味わいは、幅広く興味をもたれています。

ケープのワイン産業が秀でた単一品種で価値を得られないなら、ブレンドでその才能を発揮すればよいと思います。最近の私のツアーにおいて、私は8年前にはほとんど見る事なかった単一品種の優れたワインを試飲する機会もありましたが、おそらくケープでよりエキサイティングなワインは、何十もの新しくて創造的なブレンドワインです。昔ながらの赤や白のボルドーブレンドだけではなく、ローヌと地中海のブレンドを基本としたワインが注目されています。

 

これらのワインで最高のもほとんどはスワートランド産です。そこは地域の生産者に実験的に与えられ、ポルトガルの品種、タナ、バルベーラ、Durif Assyrtiko、パロミノやその他の風変わりな品種が植えられることはいうまでもありません。ケープのワインシーンは著しくダイナミックに絶えず進化しています。いま南アフリカの最も注目されているワイナリーは、1990年代半ば以前には存在しませんでした。無数の若い才能のあるワインメーカーが、南アや他の国のワイナリーでキャリアをつみ、、比較的安いとぶどう畑の恩恵をうけ彼ら自身のプロジェクトを自分自身ではじめました。

 

◎白ワインは見逃せない

 

南アフリカは白ワインの産地です。南アフリカは地中海性気候のため、よい白ワインは偏在しています。冷涼な地域と、白ワインに適したミクロクリマのおかげで、いきいきとして個性的で高品質のシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、シュナン・ブランのワインが造られています。

実際、本稿では白ワインが最高得点のかなり大きな割合を占めます。

私のような、手頃な価格のおいしい白ワインを発見することは、難しいと思っている消費者にとって南アフリカは価値ある選択をもたらします。

◎人気上昇中のエノツーリズム

南アフリカワインは、現地で発見するのが最もよい方法です。この地域の美しいワインファームによってエノツーリズムは急増しました。

ケープエリア(ケープタウンももちろん)は、冬の時期に雨が降るだけで、一年を通して穏やかな過ごしやすい気候で、旅行に最適なすばらしい場所です。とくにステレンボッシュは歴史的な建物もあって最高です。

南アフリカの通貨が弱いおかげで、ホテルの価格はお手頃で飲食費は非常に安くすませることができます。ケープの多くのファインレストランは、ジョーダン、クレイン・コンスタンシア、トカラのようなワイナリーに併設されています。彼らは地元のワインの驚くべきセレクションを持っており、ワインの価格は、通貨の強さも合わさって一般的に驚くほどリーズナブルです。

 

◎最近のヴィンテージメモ

 

私が2015年の4月の訪問したときにはすっかり終わっていましたが、火事による煙が、2015の初期の生育期に続きました。この年は、非常に暑く乾燥していて多くのワイナリーは1月中旬に収穫をはじめていました。

干ばつと風は多くの深刻な山火事を2月に引き起こしました。そして、収穫が終わってしばらくたっていても、火事は4月中旬の私のツアーの間もまだ問題でした。それでも、多くの生産者は、収穫期によいぶどうが収穫できたので2015年のワインの品質に楽観的のようでした。一部の生産者は、2015年が2009年以来のケープの最高のヴィンテージだと感じています。

 

2014年は、涼しい年でした。春の湿度が高く、収穫期の雨にも苦しめられました。しかし、十分に熟した果実は凝縮かがありつつ、フレッシュさを伴うエレガントなワインをとなりました。収穫時期の後半に腐敗が広範囲に広がりましたが、2月が暑く乾燥していたため、白ワインの品種にとっては好都合でした。

 

2013年は、収量が多く、収穫時期は遅めでした。良好な天候のおかげでよく熟したぶどうは、アルコールレベルも適度で、とても満足できる赤と白ワインができました。

非常に暖かく乾燥した12月は、通常晩熟のぶどう品種もやや早めに収穫できることになり、通常より収穫期間が短くなりました。このヴィンテージは、とりわけ優れた年ではないですが、ケープの古典的なヴィンテージと言えます。

 

2012年は、一年を通して穏やかな生育期と暑く乾燥した1月のおかげで、早くから楽しめるフルボディのワインができました。収穫期は涼しく、比較的乾燥していました、赤は適度なアルコールで非常に色や風味の優れたワインとなりました。私が4月に訪れた多くの生産者は、バランスよくわかりやすさがあり、最高のヴィンテージの骨格にはやや不足するものの好ましい味わいでした。

2012 年のパワフルな赤ワインは、固すぎず、タンニンも強すぎないので、これらのワインから飲み始めるのもよいと思います。

 

◎フィンボス

ウェスタンケープは、並外れた生物多様性で知られています。この地域でみつかる8500種類の植物の大多数は、海岸地域の平野と谷、山を覆っている固有のフィンボスという植物です。この地域は夏の期間にほとんど雨がふらないので植物というより灌木に近い雰囲気を持ちます。フィンボスは南アフリカにおけるガリーグ(南仏特有のハーブ)のような存在だと思います。個性は著しく異なりますが、ハーブや乾燥したスパイスの風味は多くの南アフリカのワインで見つけることができます。

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今年は、9月15日から17日までケープワイン2015が開催されます。
Anyway で一押しの、クリスタレム、アルヘイト、ショーン&ドーター、ラールから
これから取り扱い予定のワインCravenも参加予定とのこと。

イギリス、アメリカなど主要国の評論家がこぞって注目している南アフリカ。
今年は行きたかったなあ〜
次は3年後か〜

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