Domaine Benoît Ente
ドメーヌ・ブノワ・アント
❦ 詳細・歴史
偉大な兄アルノーの系譜を継ぎ、ブルゴーニュのトップ生産者の地位にまで上り詰めたブノワ・アント。20 ほどの区画に及ぶ約6ha を所有する小規模ドメーヌの当主として、テロワールを優美で、繊細かつ明確に表現しています。
彼は細部へのこだわりを大切にする、冷静で、辛抱強く、穏やかな醸造家です。
若かりしブノワは1990 年、伯母のもとでピュリニー・モンラッシェに位置する祖母父が営むドメーヌで働き始めました。労働力不足を理由に荒廃農地となっていたドメーヌの畑は、1940 年代後半、ブノワの母方の祖父による大きな変革を経験しました。ブノワが彼を真の「ストイックな仕事人間」と表現するように、祖父はマサル・セレクションによる植え替えを多くの区画で行いました。
ドメーヌで働くようになってから7 年後、ブノワはネゴスにブドウを売るのを止め、自らのワインを1998 年ヴィンテージから手掛けるようになりました。1997 年には所有する畑のうち2.5ha を管理することを決め、霜と雹に見舞われる難しい年となったファーストヴィンテージ1998 年を生産しました。以来、兄アルノーとの活発な意見交換や互いのワインをテイスティングする経験を通じて、ワインの完成度を大幅に磨き上げました。
❦ 畑
畑仕事とワイン造りにおいてブノワは、ワインの洗練されたスタイルを押し出すこと、土壌のエネルギーと凝縮感を引き出すことに焦点を当てています。畑では、環境への配慮、土壌の生態系を守るための土壌改良作業を進め、ブドウの成熟が順調に進むために、品種、土壌の性質、日当たり、樹齢など異なる各区画に応じた剪定を行っています。また、収量を徹底的に管理し、糖分、酸味、ミネラルの最良のバランスを求めて収穫日を判断しています。
近年の気候変動を受けて、ブノワはブドウ栽培と農業に関する研究を欠かしません。
畑では有機農法を取り入れており、除草剤や化学肥料は使用しません。アルノーと同様、畑に下草を生やすことで、乾燥の影響を最小限に抑え、土壌からの水分蒸発と土壌温度の上昇を抑えています。
植密度は10,000 本~11,000 本/ha ほどで、仕立ては、ギュイヨ・サンプル、ギュイヨ・プサール、コルドン・ド・ロワイヤです。収穫には小さなかごを使用し、手作業で進められます。
❦ 醸造
醸造においても、畑同様に精密さと徹底性を重視しています。最新鋭の設備を導入し、ゆっくりと丁寧な圧搾が可能になったことで、酸味を保ちながらも十分な骨格のある凝縮したエキス分を抽出できるようになりました。
キュヴェごとに、ドゥミ・ミュイ、フードル、タンクを使い分けます。
2019 年には、果実本来の味わいと土壌の特徴を忠実に表現するために、木樽の使用を減らす判断をしました。それ以降、228L の木樽を使用せず、“ ワイン・グローブ ” と呼ばれる、近年ブルゴーニュだけでなく世界の名だたるワインメーカーの間で流行しているガラス容器を導入しました。
また、2010 年代初頭からは熟成期間を18 ヶ月以上に延ばすなど、より高みを目指すブノワの細部へのこだわりと完璧を求める姿勢はとどまるところを知りません。長い熟成を経てその真価を発揮するブノワの緻密なワインは飲み手を魅了し続けます。