Quality South Africa Wine キャシー・ヴァン・ズィルMW&大橋健一MW共演セミナー(試飲編)
JALアカデミーで開催された南アフリカワインのセミナーに参加してきました。
南アフリカのワイン産業と歴史、土壌、気候、ぶどう品種、ワインの原産地呼称などの概要の説明のあと、彼らが選ぶQuality South Africa Wineの試飲がありました。
キャシー・ヴァン・ズィルさんは、南アフリカのワインガイド「プラッターズ」の編集者とテイスターをしているマスター・オブ・ワイン。南アフリカワインへの情熱を感じる素敵な女性でした。
名前が上のほうにあるので、かなり偉い人なんだと思います。でも全然偉そうでなくて、とてもフレンドリーでチャーミングでした。
昨年MW となった大橋さんは、マスター・オブ・ワインの試験の時にいろいろとお世話になったようで、「いつもは(MWの研修のとき)厳しいキャシーが今日は優しい(笑い)」「先生と共演できて嬉しい」と非常に和やかな雰囲気でした。
短時間でしたが、南アのワインの品質だけでなく、ワイン産業をとりまく制度、自然環境、そこで働く人を含め、この業界が発展して続いていくには、、、なんてことまでにワインショップで働くただの一個人がふと思いを馳せてしまうようなアカデミックで濃い内容でした。
さて、その彼らが選んだワインがこちら
セミナー2時間の内容をまとめるとなるとちょっと長いので、
(というかちょっと感動したので、まだまとめられないです)
本日はMWの気になるワインのコメントを拾えた限り記載します。
南アのワインを極めているキャシーさんとWSETディプロマ受験の方にとても参考になる大橋さんのコメントとともに、ひっそり私の素朴な感想もつけました。
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1)Ken Forrester Stellenbosch The FMC 2012(ケン・フォレスター・ステレンボッシュ FMC)
◎キャシーさん;
私がこのワインを試飲の最初にしたのは、南アのシュナン・ブランが青くてすっぱくてつまらない、なんてことはない、という証明として、南アの高品質なシュナン・ブランを示したかったからです。このワインは南アフリカのシュナン・ブランのアイコンです。
100%ステレンボッシュのシュナン・ブランです。ブッシュ・ヴァインの古木を使っており、平均樹齢は約38年。凝縮感がありリッチで複雑なワインです。かりん、バニラ、柑橘の風味とミネラリーなフィニッシュがあります。
◎大橋さん;
将来的にMWやディプロマを取得したい人は樽熟させたシュナンの鑑定は絶対に必要です。香りだけではシャルドネのように感じるかもしれませんが、このレベルの酸味があって補酸の雰囲気がなければ、これだけリッチであってもシャルドネではないです。10gの残糖がありますが、酸によってひじょうにさわやかに感じます。
Anyway Grapes 担当;
南アのシュナンの最高峰というお墨つきをいただきました!さすがミスター・シュナン・ブラン。凝縮感があってクリーミーで残糖があるというごってりした要素をすべて持っているにもかかわらず、酸が高く、ミネラルが豊富なので最後まで決して重たくならないというバランスがもう素晴らしいです。
時間がたってもだれてこなかったので、構成のしっかりした緻密なワインだなと確信しました。高いけど1本(できれば2本)購入して家で熟成させたいなとやっぱり思いました。
生産者ページ:Ken Forrester(ケン・フォレスター)
2)Ataraxia Wines Chardonnay 2014(アタラクシア・ワインズ・シャルドネ)
◎キャシーさん;
ニューワールドの最高のシャルドネの一つです。新樽は26%。レモン、ウェットストーン(湿った石)フルーティーでクリーンな印象です。
◎大橋さん
このワインは非常にエレガント。細身ですがそれでも極端に涼しいところではなく、カリフォルニアの冷涼な気候、たとえばリッジのシャルドネやソノマコーストの涼しいエリアのシャルドネを感じました。部分的にマロラクティック発酵をしているのが感じられます。
MWの研修ではワインを試飲するときに、品種を探るくせはやめたほうがよいと言われます。まず産地、テロワールを感じてそれを語ることが大切です。
Anyway Grapes 担当;
2014年は酸味が高めで細身。毎年樽の使いかたが非常に上品でエレガント。レモン、ヨーグルト、ミネラルの風味を感じました。きめ細かくなめらか。ニューワールド最高のシャルドネと思うと、割安ですね♡ピノの入荷が待ち遠しいです。
生産者ページ:Ataraxia Wines (アタラクシア・ワインズ)
3)Thorne & Daughters Rocking Horse Cape White 2014(ショーン・ドーターズ ロッキング・ホース・ケープ・ホワイト)
◎キャシーさん;
W.Oがウェスタンケープとなっています。これは、ケープ・ホワイトと呼ばれるエキサイティングワインのスタイルで、ウェスタンケープに散らばる畑のぶどうがブレンドされています。このスタイルのワインは南アにしかないので、南アフリカを表現した唯一無二のワインと言えます。基本的にはシュナン・ブランベースで、ルーサンヌ、セミヨン、シャルドネなどをブレンドします。畑は品種ごと土壌が異なるため、花崗岩、粘土、頁岩、礫岩のブレンドになります。
◎大橋さん;
熟したカリン的な香りなのに、酸味が控えめで、ウリっぽい植物の要素も感じられるという、トリッキーなワインです。極端に暑いところや寒いところではないなとは思いました。少しバターっぽい要素もあります。他と比較が出来ないワインです。
Anyway Grapes担当;
2014年は2013より酸味があるので、よりフレッシュでいきいきしています。オレンジ、カリン、レモンのシュナンのようなアロマと熟したメロンのような甘い果実感があり、味わいが複雑。口当たりは柔らかく酸味とミネラル、バタースカッチのような風味もあります。このワインは、ケープ独自のスタイルでとてもおもしろいと思っています。ラベルも好きです。
生産者ページ:Thorne & Daughters ショーン・ドーターズ
A.A.Badenhorst Familly White (A.A.バーデンホースト ファミリー・ホワイト)
◎キャシーさん;
ワインメーカーは少しいかれてる(←これは、通訳のかたによる表現です。確かにアディはちょっとぶっとんだ感じですが)けど、私の大好きなワイン。
スワートランドの古木のブッシュヴァインのぶどう10品種をブレンドしています。48%はシュナンです。白桃、シトラスフルーツのアロマ。リッチで、口の中に生き生きとした味わいが広がります。通常こういうワインは途中で飽きてしまうのですが、塩気と旨味のあるフィニッシュのおかげでたいくつになりません。
◎大橋さん:
南アフリカワインを語るときに、無視できない造り手です。ロンドンのショップに行ったら必ず購入していました。ファンキーなワインメーカーで、古木を混醸します。複雑性が非常に高いワインです。このワインは、いろいろな候補があるなかで、本日のMWの祝賀会でも参加者にサービスいたしました。
Anyway Grapes担当;
カリン、オレンジのようなフルーツの風味。口のなか全体を潤すようなみずみずしいフルーツ。キャラウェイシード?かなちょっと甘みのあるスパイス。後味の塩っぽいミネラルが味わいを引き締めていています。暑い場所のワインなのにフレッシュでフルーティで過熟感がない。見事なバランスだと思います。キャシーがソルティ+うまみフィニッシュとコメントしてましたが、このワインが生の魚介類に合わせても全く違和感ないのは、この後味のおかげなんでしょうね。
生産者ページ:A.A.Badenhorst
Crystallum Cuvée Cinema Pinot Noir 2014 クリスタルムキュヴェ・シネマ・ピノ・ノワール
◎キャシーさん;
私は南アがピノ・ノワールのベストカントリーだとは思ってはいないけれど、年々品質が良くなっていることは確かだと思います。このワインはヘメル・アン・アーデの非常に涼しい畑のぶどうを、全房でつぶし、全房発酵をさせています。南アのピノは、オールドワールドのワインとニューワールドのワインの個性を備えていると思います。ニュージーランドやオーストラリアのようなフルーティーなだけの個性ではありません。もちろん、ラズベリーやストロベリーなどのベリー系の要素はありますが、土っぽさ(アーシーさ)が特徴的です。
ピノ・ノワールは非常にデリケートなので、これまでのフルボディの白ワインの後の試飲はなかなか難しいですね。生産者のピーター・アランは、若く情熱的。南アのピノのトップ生産者です。彼の父親も偉大なピノの生産者でしたが、彼は父を超えていくだろうと思います。
◎大橋さん:
私の大好きなピノの一つです。ディプロマをめざすひとはこの香りから全房発酵を見抜かないといけないです。キャシーは「ステミネス」と表現していましたね。フランスの自然派の造り手よりは青さが少ないです。全房をするとpHが低くなるので二酸化硫黄が少量ですみます。テクスチャーがいくぶん緩いですが、このワインはフランスと間違えやすいワインですね。
Anyway Grapes担当:
ワインは1時間前から机にあったのでやや温度があがってしまったのか、ちょっと構成が緩く感じました。以前飲んだ2014はもっとタイト。ピノの提供温度は難しいですね。わずかに感じる青さが全房(ステム)の証拠のようです。ブルゴーニュワインが好きな方は、絶対はまる1本です。
生産者情報:Crystallum
Craven Wines Syrah Faure Vineyards (クラヴァン・ワインズ シラー・ファーレ・ヴィンヤーズ)
◎キャシーさん;
クラヴァンはステレンボッシュですが、最も海に近い涼しいところに畑があります。
昔の南アのシラー(シラーズ)は、フルーティすぎで、オークが強すぎで、時々飲みにくいワインでした。こういうスタイルのワインを造っていたときは、ぶどうは完熟させて、100%新樽で熟成させており、あまり品種やテロワールの個性を感じられませんでした。
この15年ぐらいでしょうか。フランススタイルのワイン造りをする生産者は、ラベルにシラーと表記するようになりました。造りは、以前とは真逆です。
クラヴァンのシラーは生き生きとしたフルーツ、オイスター・シェル(牡蠣がら)のようなミネラル、辛口で長くきれいなフィニッシュが続きます。
◎大橋さん:
圧巻。素晴らしい全房発酵のシラーです。世界中で今冷涼気候のシラーが注目されています。例えばチリのアコンカグアやニュージーランドのホークスベイ。今までのシラーはスパイシーでしたが、これはフローラルです。私は、自分の師匠のネッドが輸入しているヤラヴァレーのジャム・シードのシラーに似てると感じました。フランスだとサンジョセフとか。全房のステミーな個性と圧巻な複雑性があります。
Anyway Grapes担当:
フルーティでフレッシュなブルーベリーやプラム、花束をかかえたようなフローラルなアロマ。口のなかを潤すようないきいきとした果実味のあとにここちのよいタンニン、長い余韻が続きます。低アルコールなのにこの満足感のある味。時間が経過してもだれることがなく、きめの細かさと構成は最後までしっかりしていました。
生産者ページ:Craven Wines
Rijk’s Private Cellar Pinotage (ライクス プライベート・セラー・ピノタージュ )
◎キャシーさん
ピノタージュは、「ゴムのにおいがする」などといわれ、かつてはあまり評判がよくありませんでしたが、造り手によっては非常によいものができています。
このワインは、ブラックベリー、チェリー、オーク由来のバニラのアロマがあります。味わいはフルーティでクリーミー。味わいが口のなかいっぱいに広がるフルボディのワインです。わずかにチェリー、バナナのような後味があります。私はいつもアメリカンオークにバナナの香りを感じます。この造り手は非常に樽の使いかたが上手な生産者です。これには、14%のアメリカンオークが使われています。
◎大橋さん
ピノタージュは試験にでるので、よく飲みましたが、私はピノタージュはこがしたゴム、青い豆を感じていました。これは、昔のピノタージュはリーフロールという病気にかかっていたので、完熟しなかったためです。余談ですが、長野のメルローもリーフロールにやられていて、グリーンな風味がありました。グリーンはヨーロッパではいやがられますが、私はそれほどいやではないです。
このピノタージュはリーフロール(青臭さ)を感じません。日本に輸入されているピノタージュではトップですね。アメリカンオークを少し使うところがこの生産者の特徴です。ピノタージュは少しピノ・ノワールの印象が感じられますが、より酸味は低めでスパイシーでリッチです。
Anyway Grapes担当
甘みのある果実味とスパイシーさがあるフルボディ。ちょっと温度が上がったせいかいつもより緩く、アメリカンオークの風味も多めに感じました。しかし、今までのピノタージュってゴムのにおいなんですね。逆にそれも知りたいかも。
生産者ページ:Rijk’s
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こうやって見ると南アワインは本当にバラエティに富んでいるなあと改めて思います。
ニューワールドの産地は、
チリのカベルネ、
ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン、
オレゴンのピノ、
オーストラリアのシラーズ
のようにアイコン的なワインがばーっと最初に有名になって、
他の品種やワインのスタイルが知られていく気がしますが、
南アはすでに何かにしぼることが非常に難しいです。
セミナーの最初に、スクリーンに次の言葉が表示されました。
There is no stereotype in South African wine.
Each wine is full of life.
distinctive & exciting.
これはジェイミー・グードの言葉のようですが、ほんとうにそう思います。
さて、興味を持ったけれども何から飲んでいいか迷ってしまったかたは、ぜひぜひ2月末の試飲販売会で、その多様さと品質の高さを実感していってくださいね。
次回のブログは講義編です。
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南アフリカワイン試飲販売会
日時
2月27日(土)
13:00-15:00 定員15名
16:00-18:00 定員15名
2月28日(日)
13:00-15:00 定員15名
試飲ワイン
12種類(内容は決定次第ブログ、Facebookでご案内します)
参加費
2000円(税込)当日受付でお支払い下さい
場所:conceptual wine boutique Anyway Grapes
店内(世田谷区経堂2-13-1-B1)電話 : 03-6413-9737
ご予約はお電話、Facebookメッセージ、メール mail@anyway-grapes.jpで承ります。
※定員に限りがありますので、ご予約後ご都合がつかなくなった場合はお手数ですがご連絡下さい。
特典:当日のワインは20%オフで販売。お買い上げ金額20,000円(税抜)以上で送料無料
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